顧問先のみなさまへ|法改正情報

カスタマー
ハラスメント対策が
会社の義務になります

「お客様第一」と「従業員を守ること」は両立できます。
経営者・人事担当者が、施行日までに準備すべきことを整理しました。

公開:2026年8月22日 10:00情報更新:2026年8月22日

FIRST, THE BASICS

そもそも、カスタマーハラスメントとは

簡単にいうと、お客様や取引先などからの要求・言動のうち、内容またはやり方が社会的に許される範囲を超え、従業員が働き続けるうえで看過できない支障を生じさせるものです。

ひと言でいうと「苦情の内容」だけでなく、言い方・行動・繰り返し方まで見て、会社が従業員を守るべき言動

大切なのは、「お客様が怒っている=カスハラ」と決めつけないことです。正当な苦情は受け止め、許容範囲を超えた言動からは従業員を守ります。

正当な苦情・申入れの例

商品や対応の改善を求める

購入した商品に不具合があり、事実を説明したうえで交換や返金を求める。口調が厳しくても、内容・方法が社会通念上の範囲内なら、直ちにカスハラとはなりません。

カスハラになり得る例

要求や手段が許容範囲を超える

商品と無関係な金品を要求する、人格を否定する、長時間拘束する、同じ要求を執拗に繰り返す、暴力・脅迫を行うなどにより、従業員の就業環境を害する場合です。

1誰からの言動か顧客、取引先、施設利用者、家族、近隣住民など
2内容・やり方は許容範囲か目的、経緯、言動、頻度、継続性などを確認
3働く環境への支障はあるか心身の苦痛や業務への看過できない影響を確認

判断の基本:この3つをすべて満たす場合が、法律上の「職場におけるカスタマーハラスメント」です。ただし、暴行・脅迫などの危険がある場面では、その場で結論を出そうとせず、安全確保と通報を優先します。

WHAT CHANGES

何が変わるのか

これまでの配慮・自主的取組から一歩進み、防止のための雇用管理上の措置が法律上の義務になります。

これまで防止対策への配慮・自主的取組
2026年10月1日から事業主の措置義務
改正法

職場におけるカスタマーハラスメントは、次の3つをすべて満たすものです。

01

顧客等の言動

顧客、取引先、施設利用者、その家族、近隣住民、将来の利用者などによる言動

02

社会通念上の範囲を超える

要求内容に相当性がない、または手段・態様が相当でない言動

03

就業環境が害される

従業員が心身に苦痛を受け、働くうえで看過できない支障が生じること

判断上の注意正当な苦情・要望までカスハラになるわけではありません。内容と手段・態様を総合的に判断します。

要求の内容が不相当

  • 商品・サービスと無関係な要求
  • 契約内容を著しく超える要求
  • 対応不可能な要求や不当な損害賠償要求

手段・態様が不相当

  • 暴行・傷害、脅迫、侮辱、暴言
  • 土下座の強要、威圧的・執拗な言動
  • 居座り、不退去、監禁、SNS上の攻撃

ACTION CHECKLIST

会社が行うこと

施行日までに、次の10項目を「方針・手順を決めた」「社内に周知・教育した」「対応体制を整え、訓練した」の3段階で確認します。各項目の3つのボタンを、左から順番にチェックしてください。

チェック方法基本は、決める → 伝える → 試す

一部を並行して進めても構いませんが、左から順に完了条件を確認すると漏れを防げます。

  1. 1方針・手順を決めた方針、判断基準、相談窓口、現場対応、記録方法を文書にした
  2. 2社内に周知・教育した管理職を含む従業員へ説明し、実施日と対象者を記録した
  3. 3対応体制を整え、訓練した責任者、連絡経路、外部連携を決め、事例訓練で確認した

この3段階について:厚生労働省の指針に示された10項目を、社内の準備状況を確認しやすくするために当事務所が整理した実務上の確認手順です。法律上の区分ではなく、チェックだけで措置義務への対応完了を証明するものではありません。

対応済み項目0 / 10項目

全30段階のうち 0段階 を確認済み

1項目につき3つすべてをチェックすると「対応済み」になります。

現在のチェック状況と「残すもの」の記入欄を、Excel形式で保存します。
  1. 01従業員を守る方針を明確にし、社内へ周知する0 / 3
  2. 02カスハラの内容と、現場での対処手順を定めて周知する0 / 3
  3. 03相談窓口を決め、全従業員へ知らせる0 / 3
  4. 04相談担当者が適切に対応できるよう教育する0 / 3
  5. 05事実関係を迅速・正確に確認する手順を決める0 / 3
  6. 06被害を受けた従業員への配慮・支援策を決める0 / 3
  7. 07再発防止策を講じる流れを決める0 / 3
  8. 08特に悪質な事案への対処方針と対応体制を整える0 / 3
  9. 09相談者などのプライバシー保護を定め、周知する0 / 3
  10. 10相談などを理由に不利益に扱わないことを定め、周知する0 / 3
チェック後が本番です

チェック後に会社が行うこと

チェックの目的は、できていない会社を評価することではなく、次に取り組む課題を見つけることです。未確認の段階を、担当者・期限・成果物・実施記録のある具体的な業務へ変えてください。

現在、優先することSTEP 1 文書化

未整備の方針・手順を決め、承認する

チェックが付いていない項目について、会社の方針、判断基準、相談・報告の流れを文書にします。作成者だけで完了とせず、経営者または責任者が内容を確認し、施行日と保管場所を決めてください。

チェック結果を、次の行動へ変える5つの手順

未確認が多くても慌てる必要はありません。次の順で進めれば、単なる「やったつもり」を防ぎ、現場で使える体制に近づけられます。

01

未確認項目を課題表へ移す

チェックが付いていない項目と段階を抜き出します。「相談先がない」「手順はあるが未周知」のように、未完了の内容を具体的に書きます。

残すもの:未確認項目の一覧
02

優先順位を決める

まず安全確保、相談窓口、責任者への報告経路など、事案発生時に直ちに必要となる項目を優先します。その後、文書や教育内容を整えます。

残すもの:優先順位と理由
03

担当者・承認者・期限を決める

「人事が対応する」だけで終わらせず、作成担当者、内容を承認する責任者、実施期限を決めます。施行日から逆算して予定に落とし込みます。

残すもの:担当者と実施予定表
04

実施した証拠を残す

方針の承認日、周知日、対象者、研修資料、訓練結果を保存します。欠席者や新入社員へ後日説明する方法も決めておきます。

残すもの:文書・周知記録・研修記録
05

事案後と定期点検で見直す

実際の相談や事案があったときは、対応が止まった箇所を振り返ります。事案がなくても、担当者変更時や少なくとも年1回は内容を点検します。

残すもの:対応記録・改善履歴

どこまで行えば「チェック済み」か

STEP 1 文書化
必要事項が文書になり、責任者の確認を受け、施行日と保管場所が決まっている。
STEP 2 周知・教育
対象となる管理職・従業員へ内容を説明し、実施日、対象者、資料を記録している。
STEP 3 体制・訓練
担当者と連絡経路が決まり、事例訓練を行い、発見した不備を手順へ反映している。

30段階すべてにチェックが付いた後:相談・事案の記録、再発防止、定期的な見直しを続けます。「全チェック=永久に完成」ではありません。

会社に期待できる効果

3段階で確認する4つのメリット

文書を作っただけでは、現場の判断は変わりません。「決める・伝える・試す」まで行うことで、次の効果が期待できます。

01

対応の長期化と現場任せを減らせる

仕組み:交代・打切り・通報の基準を決め、全員へ伝え、訓練で確かめます。

期待できる効果:担当者が一人で抱え込む時間が短くなり、上司への引継ぎや組織判断を早めやすくなります。

02

被害の深刻化や離職リスクを抑えやすい

仕組み:「会社が守る」という方針、相談先、相談後の対応を見える形にします。

期待できる効果:従業員が早い段階で報告しやすくなり、心身の不調や休職・離職に至る前の支援につなげやすくなります。

03

正当な苦情を見落とさず、過剰対応も防げる

仕組み:要求内容と手段・態様を分けて確認する判断基準を共有します。

期待できる効果:改善すべき苦情は受け止めながら、許容範囲を超えた言動には毅然と対応しやすくなり、顧客対応のばらつきを減らせます。

04

会社が行った対策を確認・改善できる

仕組み:方針、周知、研修、訓練、事案対応の記録を残します。

期待できる効果:「実施したか」を社内で点検でき、担当者変更時の引継ぎや、事案後の再発防止にも具体的に活用できます。

効果についての注意これらは対策によって必ず得られる結果を保証するものではありません。ただし、会社の判断基準と連絡経路を事前にそろえることは、発生時の迷いと対応の遅れを減らす土台になります。

もし今日、起きたら

現場でカスハラかどうかを決着させる必要はありません

担当者の役割は、その場で法律判断をすることではなく、被害を広げず、責任者へ引き継ぎ、事実を残すことです。

危険を感じたら、社内手順より安全確保と110番を優先します。
  1. 1危険から離れる距離を取り、従業員と周囲の安全を確保する。暴行・脅迫などは直ちに110番する
  2. 2一人で抱えず応援を呼ぶ上司・責任者・本部へ連絡し、可能なら複数人対応または担当交代にする
  3. 3会社の基準を伝えるできること・できないことを落ち着いて説明し、繰り返される場合は退店・電話終了を判断する
  4. 4事実を客観的に残す日時、場所、要求、具体的な言動、対応、目撃者、録音・画面保存などを記録する
  5. 5従業員をフォローするその日のうちに状況を確認し、対応から外す、休ませる、専門窓口につなぐなど必要な配慮を行う

避けたい対応:担当者個人の判断で金品や特別対応を約束する/一人で長時間対応を続ける/感情的に言い返す/記録を残さず終わらせる。

FAQ

よくある質問

経営者・人事担当者から寄せられやすい疑問を、実務に沿って整理しました。

Q01従業員が少ない会社や、1人で接客する店舗も対象ですか?
A

はい。すべての事業主が対象です。1人勤務の現場では、交代ができない場合を前提に、一定時間で対応を終了する基準、退店を求める手順、経営者・本部への連絡、警察への通報方法などを具体的に決めます。

Q02お客様から強く苦情を言われたら、すべてカスハラですか?
A

いいえ。商品やサービスの改善を求める正当な申入れはカスハラではありません。誰が言ったかだけで決めず、要求内容、言い方や行動、経緯、頻度・継続性、従業員への影響を確認し、3つの要素をすべて満たすかを総合的に判断します。

Q03会社側にミスがあった場合は、カスハラになりませんか?
A

会社や従業員の不適切な対応が原因になっている場合は、その事情を十分に考慮し、必要な謝罪や改善を行います。ただし、会社側にミスがあっても、暴行・脅迫、人格否定、長時間の拘束など、手段や態様が許容範囲を超える言動まで受け入れる必要はありません。

Q04方針や対応手順は、誰まで知らせる必要がありますか?
A

管理職だけでは足りません。部署や雇用形態、顧客対応の有無を問わず、会社が雇用するすべての労働者へ周知します。現場対応を行う人には、説明だけでなく事例を使った研修・訓練も行うと実効性が高まります。

Q05電話、メール、SNSや訪問先での言動も対象ですか?
A

対象になり得ます。店舗での対面対応だけでなく、電話、メール、SNSなどのインターネット上の言動や、取引先、顧客宅など業務を行う場所で受けた言動も含まれます。画面保存、日時、対応者、言動の内容などを記録してください。

Q06相談窓口は、既存のハラスメント窓口と同じでよいですか?
A

同じ窓口でも、別の窓口でも構いません。カスハラはその場での応援や交代が必要になるため、通常の相談窓口に加えて、現場の上司・責任者へ直ちに連絡できる経路を用意すると実務的です。外部機関へ相談対応を委託する方法もあります。

Q07顧客との会話を録音・録画してもよいですか?
A

事実確認の資料として活用できますが、個人情報に当たる場合があります。利用目的をできる限り特定し、本人への通知または公表、適切な保存・利用範囲などを整える必要があります。録音・録画を始める前に、プライバシーポリシーや社内手順を個別に確認してください。

Q08会社の方針を店頭やウェブサイトで顧客へ示す義務がありますか?
A

顧客へ周知することまでは義務ではありません。ただし、従業員を守る方針や対応を終了する場合があることを、店頭掲示やウェブサイトであらかじめ伝えることは、被害防止に効果的な取組とされています。消費者の権利や合理的配慮にも留意します。

Q09悪質な顧客は、必ず出入り禁止にしなければなりませんか?
A

いいえ。出入り禁止を方針に定めた場合でも、すべての事案で機械的に適用するのではなく、事案の内容・程度・経緯を確認して判断します。一方、暴行・傷害・脅迫など犯罪に当たり得る場合は、認定を待たず安全確保と警察への通報を優先します。

Q10就業規則を変更すれば、対応は完了ですか?
A

完了ではありません。就業規則や社内方針に書くだけでなく、相談窓口、現場の対応手順、事実確認、被害者への配慮、再発防止、プライバシー保護などを実際に運用できる状態にする必要があります。自社の従業員が取引先等へカスハラを行った場合の服務規律や懲戒規定も確認してください。

OFFICIAL SOURCES

根拠資料

本ページは、2026年8月22日時点で公表されている厚生労働省資料をもとに作成しています。

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